キャリア開発プランの提示による、入社意思決定への影響の検証
  • 更新:2023.05.19
  • 投稿:2022.11.25

キャリア開発プランの提示による、入社意思決定への影響の検証

研究レポートの要約

 過去のレポート1では、新卒採用活動でAIによるアセスメントを導入し、人とAIが協働する採用構造への変革の取り組みを紹介した。同レポートにおいては、採用活動における「選考」業務の大部分をAIに代替した結果、採用担当者が内定者に入社の意思決定を促す「動機形成」により多くの工数を費やすことが可能になったことを定量的に示した。この取り組みに加え、当社ではAI技術を用いて未来の成長を個別に予測し、適切なキャリア開発を行う「キャリアプランニング」のサービスを開発している。本サービスの試験的導入として、2018年卒の新卒採用活動より応募者への「キャリアプランニング」の提供を開始し、その効果を調査した。本レポートでは、同サービスの提供が内定者の入社に対する意思決定にどのような影響を与えたかの検証を行う。

1 Human Capital Report No.26;株式会社セプテーニ・ホールディングス人的資産研究所, 2018

研究背景

1.取り組み内容

 過去の研究レポート2で示したように、選考フローの大部分をAIに置き換えることで、採用担当者は従来よりも多くの工数を応募者の「動機形成」にかけることが可能となった。更にこの「動機形成」のフローを強化するために、個々の応募者に約60ページにわたるキャリアプランニングシートを用意し、応募者自身のキャリア理解に役立ててもらう取り組みを行っている。
 キャリアプランニングシートには当社の基本情報に加え、AI技術を用いた入社後のキャリアシミュレーションなど、個々の応募者に合わせた情報が掲載されている(図1)。AIによる機械的な選考は、応募者によっては冷たい印象を抱く可能性もあるが、個別に手厚い情報提供を行うことでその懸念を払拭できると考えた。そしてこの取り組みを通じて入社前に応募者が抱く様々な「不安」を解消し、内定辞退の抑制に繋げることを目指した。

キャリアプランニングシートのイメージ

2 Human Capital Report No.26;株式会社セプテーニ・ホールディングス人的資産研究所, 2018

2.検証

2.1. 検証に用いるデータ

 今回の検証にあたっては、2016年卒から2018年卒までの合計3年分の内定者のデータを用いた。キャリアプランニングシート(以下「CPS」と略す)の利用は2018年卒の内定者から活用され始めた取り組みであったため、2016・2017年卒の内定者はCPS活用以前の状態(言わば比較対象のデータ)、2018年卒の内定者がCPS活用以降の状態となる。この3年間で内定者の動向に変化があれば、原因の特定は困難であるが、CPSの影響があることは示唆されると考えた。
 本レポートの主な仮説は「2018年卒内定者では、CPS活用の影響によって内定受諾率が上昇するのではないか」というものであるため、まず内定を受諾したか、辞退したかの変数(受諾=1,辞退=0)を主な分析対象とした。またこの他に「文系・理系」「個人特性の分類」(FFS診断結果)などを統制変数として分析に用いた(3.3項参照)。これには2つの目的がある。
 第一に、シート導入前と導入後の内定辞退率の変化が、例えば「応募者に明るい人が増えたから」「応募者に文系学生が増えたから」のように、年度とは関係のない要因で生じている可能性をできるだけ除外するためである。第二に、内定受諾率の変化が特定の個人特性や属性の層に特に影響している可能性を探索的に検討するためである。ただしこの目的に関しては、事前に「〇〇な人にCPSの影響が強いのではないか」という仮説を設けることはせず、2016年卒から2018年卒までの内定者データとして共通に見られた主要な変数を用いて、網羅的に分析を試みた。

 

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