オンラインリクルーティングにおける採用精度の検証
  • 更新:2023.05.19
  • 投稿:2022.11.25

オンラインリクルーティングにおける採用精度の検証

研究レポートの要約

 昨今のHRテクノロジーの発展に伴い、面接等をWeb上で実施するオンライン型の選考手法が注目を浴びている。このような選考手法では対面の面接をWeb上でのコミュニケーションに置き換えるため、応募者の能力の見極めや応募者と企業のマッチングにおいて、対面型の選考方法と比較して不利であるとも考えられる。一方、オンライン型の選考手法でも従来の選考手法と同等かそれ以上の精度が確認できれば、新たな採用方法の確立のきっかけにもなり得る。本レポートにおいては、株式会社セプテーニ・ホールディングスで実施されているオンライン型の選考手法で実際に得られたデータを分析し、「直接顔を合わせずとも活躍人材を採用できるのか」という課題の検証・考察を行った。

研究背景

1.はじめに

背景

 昨今の情報技術の発展により、企業は時間的・地理的制約にとらわれずに経済活動を行うことが可能となっている。例えば、Web会議システムを使えば自分のデスクにいながら遠隔のパートナーとの打ち合わせも可能だ。このような潮流は人材採用の領域においても同様であり、今日の日本企業はIT技術を活用した採用活動に盛んに取り組んでいる。具体的にはWeb面接機能を搭載したシステムを活用し、遠隔地の応募者との面接をオンライン化することで、応募者・採用担当者双方の時間的・金銭的な移動コストを削減する取り組み等が注目を浴びてきている。
 このような採用手法はWeb上でその選考工程の大部分を完結するため、企業にとっては効率性や新たな人材母集団へのアプローチという点で、応募者にとっては移動コストの削減という点で、魅力的なものになり得る。しかし、従来の対面形式のリクルーティング(以下「対面採用」と略す)と比較した場合、どうしても双方の言語的・非言語的コミュニケーションの質や量に劣る点が懸念として残る。つまり、上記のようなオンライン形式の選考活動を行う限り、「応募者と直接顔を合わせずして、本当に活躍人材を採用することが可能なのか」「コミュニケーションの質や量が劣るならば、応募者・企業のミスマッチが増えるのではないか」という疑問から逃れることができない。しかし、対面の面接を行わなくても活躍人材を採用できることが確認できれば、上記の懸念を解消し、新しい採用のあり方を確立するきっかけになるのではないか。
 このような背景を踏まえて、本レポートでは株式会社セプテーニ・ホールディングス(以下「セプテーニ・ホールディングス」と略す)において実施された2018年卒新卒採用の実際のデータを基に、上記の点について実証的に検証・考察を行う。

取り組み内容

 セプテーニ・ホールディングスでは、地方在住の優秀な学生の獲得や遠隔地の学生の移動における負担低減等を目的とし、2018年卒の新卒採用活動よりWeb上で全ての採用活動が完結する「オンラインリクルーティング」を開始した(以下「オンライン採用」と略す)。
 選考の大まかな仕組みは次の通りである。まず応募者がオンライン採用にエントリーし、履歴書情報等、応募者自身の情報を入力する。それと同時に、キャリアに関するアンケートや個性を評価するFFS1診断等を受検したのち、Web面接システム上で短い自己紹介の動画を送る。この段階で、同社が自社開発した「活躍予測モデル2」により応募者が入社後にどれくらい活躍し得るのかについての統計的な予測結果が算出される。
 選考の次の段階として、算出された応募者の活躍予測のデータを参考にしつつ、面接官がWeb会議システムを用いて応募者と面談を行う。
 そして最終面接を通過した応募者には、採用担当者が個別に面談等を通じてコミュニケーションをとる。採用担当者による面談は、実質的に内定が決まった応募者の入社の動機形成フェーズとなる。ここでは選考フロー内で得られた本人のデータや活躍予測を基に、本人に最適化された「キャリアプランニングシート3」を提供し、入社後の生活やキャリアを具体的にイメージさせることで、心理的な安心感や納得感を高めることに取り組んでいる。
 このように、オンライン採用は応募から内定までの選考活動の全てがオンラインで完結される選考フローとなっている。各選考プロセスをオンライン化したことに加えて活躍予測モデルも活用することで、選考にかかる作業工数を約9割削減し、その分の時間を応募者の動機形成のためのコミュニケーションに充てることが可能となった4。また、地方在住の応募者にとっても金銭的・時間的コストがかからないため、同社にとって従来接触することができなかった層にもアプローチが可能となった。2018年卒においては、従来の対面採用とオンライン採用を並行して実施し、前者では80名、後者では21名の入社が決まった。

1 株式会社ヒューマンロジック研究所が提供するFive Factors & Stressの略称。詳細は次のURLを参照(http://www.human-logic.jp/about/)。
2 Human Capital Report -No.05「人事データマネジメントおよび統計技術を活用した『科学採用』新卒編」株式会社セプテーニ・ホールディングス人的資産研究所, 2015
3 Human Capital Report-No.29「キャリア開発プランの提示による、入社の意思決定への影響の検証」株式会社セプテーニ・ホールディングス人的資産研究所, 2018
4 Human Capital Report-No.26「AIと人の協働による採用活動の成果の検証」株式会社セプテーニ・ホールディングス人的資産研究所, 2018

 

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