AI導入が採用活動と人材育成に及ぼす影響の検討
  • 更新:2023.02.13
  • 投稿:2022.11.25

AI導入が採用活動と人材育成に及ぼす影響の検討

研究レポートの要約

 昨今、人事・組織領域においても、AIを用いたデータマネジメントの仕組みを企業に導入するケースが増えている。しかしAIがどのように業務を改善しうるのか、また社員に対して影響を与えるのかについてはまだ実証的なデータや研究が少なく、その影響がポジティブ・ネガティブどちらであるかについてすら未知数である。そこで本レポートではセプテーニ・ホールディングスにおけるAIを用いた採用・人材育成システムの影響を定量的に検討し、AIシステム(HaKaSe)の有効性を検証した。分析の結果、同システムが入社時に予測した社員の「活躍度」は、実際の社員の早期活躍とも関係がみられたほか、システムの導入前後で早期活躍する新入社員の割合も増加していた。以上の結果から、AIを用いたシステムの開発と導入は、人事・組織領域の業務を大きく改善する可能性を秘めていると考えられる。

研究背景

研究の問題意識

 2018年現在、AIを用いたデータマネジメントの仕組みの企業への導入が進んでいる。それは人事・組織の領域においても同様であり、採用活動の支援(e.g. 人材のみきわめ)を中心に様々なサービス開発が行われている。
 しかしこうしたAIを用いた仕組みが人事・組織にどのような影響を及ぼすのかについては、今まさに議論が進んでいる段階で、確たる結論が出ていない。例えば日本の例でいえば、慶應義塾大学の山本勲教授を中心とした研究グループが、AIを用いたシステムが特に労働に与える影響を検討している1。研究は現在進行形で行われていることもあり、AIを用いた仕組みには肯定的な影響があるとも、否定的な影響があるとも結論付けることはまだ難しく、多様な実証データの蓄積が求められている段階であると考えられる。

1 http://www.persol-pt.co.jp/news/2018/03/27/2254/より(2018/6/8 参照)

本研究の目的

 この背景を踏まえて本レポートでは、株式会社セプテーニ・ホールディングス(以下「セプテーニ・ホールディングス」)において人材採用・育成活動に導入されたAIシステムの影響を定量的に議論する。
 セプテーニ・ホールディングスでは、採用活動中に得られるアセスメントや選考の行動履歴などの採用データをAIによって分析し、応募者が戦力化する工程を予測したうえで、その可能性を引き上げるアドバイスを行うことに取り組んでいる。社内ではこのほかに退職者の予測なども行われており、AIによる予測を中心とした人材採用・育成活動に関する一連のデータマネジメントのタスクを構造化したものを「HaKaSe」と呼んでいる。
 この仕組みの導入は2015年に始まり、2018年現在で導入後の採用・育成データが 2015〜2017年の3年分蓄積されている。3年にわたるデータの傾向、例えば新入社員の活躍の傾向と、仕組みの導入以前のデータの傾向を比較することで、HaKaSeの導入が人材採用・育成に与えている 影響を間接的に検討できるのではないかと考えた。
 そして、様々に考えられる影響の中でも、本レポートでは2つの点に注目して分析を行った。
HaKaSeによる業績予測は人材の「活躍」を予測することができるか
 HaKaSe導入の最大の目的は、入社後に活躍が予想される人材をより多く採用することである。この前提には、HaKaSeによる「業績予測」が、新入社員の入社後の活躍を定量的に予測できているという仮定がある。従ってHaKaSeの導入が企業に良い影響を与えているかどうかを検討するには、まずこの仮定が満たされている必要がある。「業績予測」は入社前にそれぞれの人を◎・○・ △の3段階で評価するものであるため、もし上記仮定が満たされているとするならば、「◎」と評価された人は入社後に実際に活躍しており、「○」や「△」と評価された人は「◎」と評価された人よりも活躍していないと予想される2。このように3段階の評価と入社後の活躍が適切に関連しているかどうか、本レポートではまず検討した。
HaKaSe導入によって「活躍する人材」を多く採用できるようになったか
 上記の前提を踏まえて、人材採用・育成 に対して肯定的な影響がみられるとするならば、導入以前(2015年より前)と比べて、2015年以降は新入社員が早期に活躍する傾向が高まると考えられる。これは、HaKaSeが早期に活躍する人材の採用を目的のひとつとしているためである。このように、入社年度と新入社員の早期活躍の間に関連がみられるかどうかを、本レポートでは定量的に検討した。

2 「◎・○・△」という評価は、あくまでも入社後 3年時点での戦力化の度合いを定量的に評価した指標であり、3年という期間で早期に戦力化を果たす可能性を表している。

 

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